電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

「専業主婦は都市部のぜいたく品」

前回書きそびれた話を少々、というか前々からの雑感をいろいろ。
このブログでは、以前も「女性の社会進出は悪い左翼フェミニズムが原因」という説への疑問を述べた。
http://d.hatena.ne.jp/gaikichi/20160404
http://d.hatena.ne.jp/gaikichi/20170522
今年、『都道府県格差』(isbn:4532263549)という本の仕事を手伝った、まあ基本的には統計データ本だ。で、全国の女性の就労率について調べたところ、興味深い結果が出ている。

平成27年国勢調査」(総務省統計局)
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001088598&cycleCode=0&requestSender=search
2-1 労働力状態(8区分),配偶関係(4区分),年齢(5歳階級),男女別15歳以上人口(総数,日本人及び雇用者)−全国

こちらのデータによると、現在の日本の就労人口は5891万9036人、女性は2584万1333人。Excelの機能で割合を計算すると43.86%でじつに半数近い。
上記のデータベースにある表は、都道府県だけでなく全国の1700を超える市町村も全部を表示しているので非常に見るのが面倒だが、とりあえず47都道府県の割合を見るとどうなるか? 女性の社会進出が近現代の現象と思っている人間ならば、都市部ほど女性の就労率が高いと思うだろう。ところが、計算結果は以下のような順になる。

- 全国 43.86%
1 高知県 47.56%
2 宮崎県 46.97%
3 熊本県 46.81%
4 鹿児島県 46.45%
5 佐賀県 46.41%
6 鳥取県 46.34%
7 青森県 45.78%
8 長崎県 45.77%
9 福岡県 45.74%
10 徳島県 45.71%

(※端数は四捨五入)
なお、最下位は神奈川県で41.90%、東京都は43.82%で全国36位だった。
内閣府男女共同参画局が発表している「都道府県別 女性の就業率(25〜44歳)の推移」は、これと異なる結果だが、地方の県が上位、都市部は下位という点は共通する。
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h29/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-04.html
なんのこっちゃ、都市部より地方の方が女性が社会進出してるじゃねえか。
地方の県(それも四国とか九州とかいっけん保守的な価値観の地域)ほど女性の就労率が高い理由のひとつは、県民所得の低さのためだ。
東京都、大阪府、愛知県などの3大都市圏は大企業が集中しているので高給取りが多い、そういう地域では「正社員の夫+専業主婦」という世帯が成り立つ。ところが、地方では嫁はんも働かなければやっていけないのだ。
逆にいえば明らかに「専業主婦=都市化の産物」なのである。
果たして、現実に九州や四国や北陸地方のスーパーや工場で働いているおばちゃんの多数は、上野千鶴子を愛読しているだろうか? 彼女らにとって左翼フェミニズムが説く自己実現なんざ何ら関係なく、単に目先の生活のため働いているだけではないのか。