電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

2004-01-03から1日間の記事一覧

そのキーワードは「大阪」か?

高村は大阪育ちである。大阪は日本第二の大都市であるが、東京とかと比べれば、狭い土地の中に、昔ながらのわかりやすい社会階層の格差の混沌が目に見えるように残っている都市だといえるだろう。 高村は、子供の頃から大阪に住みながら、遂に頭の中が日常会…

中上健次の作風のひとつは

戦後日本の知識人たちにとって、一見して単純な二元論対立図式で見られてきた、戦後の「近代」と「土着」が、現実の地方の現場では複雑に入り組んだ形で存在していたことを描ききった点だとわたしは思っている。 日本の文学者の多くは、単純な、都会に出てき…

『晴子情歌』と中上健次 覚え書き

年末、仕事関係で読むことになった、高村薫『晴子情歌』が、いきなり2003年の私的読書ベストに入ってしまった。 同作品を読んで真っ先に連想したのが、中上健次の『岬』『枯木灘』『地の果て 至上の時』の紀州サーガ三部作である。何しろ、中上の同シリーズ…