電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

早すぎた近代人

山田風太郎銀河忍法帖』とその続編『忍法封印いま破る』を読了。
江戸時代初期の鉱山技師大久保長安を、南蛮渡来のからくり仕掛け満載の城に住み、日本のみならず世界覇権まで視野に入れた先駆的近代人=マッドサインティストと解釈した奇想小説、と、かつて浅羽通明氏が解説してた作品である。
銀河忍法帖』では、大久保長安が、明らかに主君の徳川家康をも脅かせる科学力を持ってるくせに、無邪気に家康に忠誠を尽くし、しかし土壇場で、家康は日本国外の広い世界も文明開化も興味なく、むしろ長安を邪魔者視してた、と知って愕然とする辺り、なるほど、研究室にこもって科学実験にいそしむ先駆的近代人でも、現実の政治、とゆうか、近代合理主義にまるで反する日本人の支配者像を理解してなかった、というマヌケ振りが逆説的にやけにリアルかなあ――なんてことを考えたが、続けて『忍法封印いま破る』を読んだら、全然別の論点に興味が移ってしまった。