電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

寝取られた女のために戦う戦士

忍法封印いま破る』では、自身の死期を悟った長安が、ひそかに三人の若い愛妾に子種を仕込んで、自分の意志を継ぎ将来の日本に革命を起こす「科学の子」を世に放たんとし、その子種を仕込まれた三人の娘を、長安が若い頃山の民サンカの女に産ませた野生児おげ丸が守る、という筋書きになっている。
さて、凄腕の忍者だが長安の「科学」など理解できないおげ丸は実父にも冷遇されてきたし、守っている三人の娘の一人は、よりによって元自分の許婚だ、それを実父に奪われ、しかも長安の薫陶にメロメロとなった三人の娘は無学なおげ丸を馬鹿にする。ところが、おげ丸は実父の死後、大久保一族根絶やしを狙う敵忍者群から三人の娘を必死に守り、歳の離れた「弟」たちが生まれるや、これも命を賭けて守ろうとするわけである。
小賢しい「近代人」として意地の悪い想像をしてしまうと、おげ丸は、実父にこまされた元許婚や、その子供として生まれた「弟」を憎んでたとしてもおかしくない、とか思っちゃうのである。物語終盤、敵忍者に追い詰められたおげ丸が、自身が生き延びるためやむを得ず、まだ赤子の「弟」を見殺しにしようと葛藤する、とかいう場面があってもおかしくないんじゃないかと考えてたが、ついぞそのような描写は一切無かった。