電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

罪悪感を逃れるための手続きの欺瞞

従軍慰安婦やら炭鉱労働者の強制連行と言われる問題も、この手の話が多いんじゃないかと思える。
たぶん、形式的名目的には一応まっとうな雇用手続きを踏んでたが、その内実は、契約書と話が違うじゃないか、現場じゃ劣悪な給与ピンハネやら、記録に残らない事実上の超過労働強制なんて話がゴロゴロありえたろう(古山高麗雄の小説でも、慰安所に行ったら、台湾人の慰安婦が、女給の仕事だと言われて来てみれば慰安婦だったが今さら帰れないので従ってる、と話してたとかいうエピソードがぽろりと出てくる)。
何しろこの国には、今の21世紀のご時世にも「別に明確に命令されたわけじゃないけど、場の雰囲気で逆らえないから」というサービス残業というものが平然とあるんだから、戦時中はもっとそんなもんばかりだったことは想像に難くない。
慰安婦やら炭鉱夫やらの斡旋をした人間も、確信犯的に騙したわけではないかも知れない、いや、実は薄々、女給の仕事だとか給与はちゃんと出る雇用条件はこうで楽な仕事だ、と説明しつつ、内実はそんなもんじゃないと理解はしてたが、罪悪感や責任を負いたくないゆえ、あえて自分自身も内実をきちんと知ろうとせず、ただ上に言われた通りの勧誘トークを喋ってたんじゃないか、という気がする……と、憶測の域を出ないが、人間心理としては、凄くありそうな気がするのである。