電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

別に創作者ばかりが偉いわけでもないが

ここのところ、上記の件も含め、また「仕事のための読書」ばっかりしてる。
半分は書評仕事だから、重複する内容はここでは書かない。
俄然面白かったのは、人物理解の参考に読んだ、富野喜幸『だから僕は…』(徳間書店/絶版)と、上原正三金城哲夫 ウルトラマン島唄』(筑摩書房)だった。
前者は、富野喜幸富野由悠季の、1960年代初頭の虫プロ鉄腕アトム』から『ガンダム』までの仕事歴を中心にした半自伝である。
後者は、テレビ脚本家上原正三の、同郷沖縄の出身の脚本家金城哲夫との出会いと、金城と共にこなした『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『怪奇大作戦』などの仕事、そして金城の沖縄帰郷とその後の急逝についてを中心とした、金城哲夫伝にして半自伝である。
両書の面白さはまったく違うが、なんとなく共通しているように感じる部分もある。
富野は、手塚治虫を高く評価していたが、当初アニメの仕事に入る気はなかった。
上原は、円谷英二や『ゴジラ』は高く評価していたが、怪獣や特撮の仕事に入る気はなかった。それどころか断固、沖縄の基地問題を扱ったシナリオを書きたかったという。
――が、そんな、しかしとにかく映像業界に入りたくて、たまたま勃興期にあったアニメ、怪獣番組に携わった両人は、それぞれ作風は全然違うが、1970年前後に生まれた我が世代には、大きな影響を残す作品群を生み出す。
何より、アニメにしても怪獣にしても、勃興期の業界の雰囲気の描写が、俄然面白かった。
――これだよ、これ。
わたしは四流のフリーライターという、表現活動に携わる仕事としては最末席の身だが、当事者ではないなりにも、せめてこういう声を再現する仕事とができれば幸いだろうなあ、などと思うのであった。
(↑うーん、何やらCMの匂いを感じさせる日録だ。さて、何の仕事かは……しばし待て!)