電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

怪獣使いの証言

ちなみに、上記の朝鮮人虐殺のエピソードを元に作られたのが、『帰ってきたウルトラマン』で上原正三脚本の代表作「怪獣使いと少年」だ。
(まさにこの話から書名を取った切通理作怪獣使いと少年』には大いに触発された)。
『TONE』誌のインタビューでは、上原氏の手掛けたヒーロー作品の話より、上原氏の戦争体験と、沖縄問題についての見解を聞くことをメインに努めた。
(最後の方じゃ、俺の好きな作品の趣味的な話も聞いたけど)
それでも唯一、上原氏の方から振ってきた自作品の話が「怪獣使いと少年」の話だった。
畏友ばくはつ五郎こと河田氏(id:bakuhatugoro)が笠原和夫に着目する一方、わたしがなぜ上原正三氏に話を聞こうと思ったかというと、20年ばかり前、雑誌『宇宙船』のインタビューで、同氏が「沖縄から本土を見ている視点が、宇宙人の視点で地球を見ている、という感覚を描くのに役立った」と語っていたのが、強く印象に残ってたからだ。
彼は星から来たウルトラマンと同様「みんな」の外から来た人物だったのである。
上原作品では『帰ってきたウルトラマン』に限らず、『イナズマンF』でも『宇宙海賊キャプテンハーロック』でも『バトルフィーバーJ』でも『宇宙刑事シャリバン』でも、自分が生き延びるためやむを得ずであっても仲間を裏切った人間は、また、例え主人公の友人あっても一度でも私利私欲のために悪の組織の誘惑に負けた人間は、必ず罰が下って死ぬ、という話ばかりが繰り返し描かれている。
そんな脚本を書く御仁だから、俺のようなどっちつかずのコーモリ野郎には覚悟が必要かなあ、と思えば、存外に物腰がサバサバとしたお方だったので安堵したが、そのサバサバした感じは、どうやら「俺は所詮異邦人」という覚悟の産物ではないかと思われる。
というわけで、貴重なインタビューになったはずです。ご期待の程を……。