電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

この上原作品が凄い

・取材前に上原脚本作品を数本観返したメモから

●『帰ってきたウルトラマン』(第一話「怪獣総進撃」)
・アーストロン出現
 逃げ遅れた村の娘、下敷きになった祖父の側から逃げようとしない
「おじいちゃんと一緒じゃなきゃやだー!」(そこを郷秀樹が助ける)
(→現代の作品なら祖父が「わしに構うな」と言って娘は泣く泣く逃げそうだが
「一人だけ逃げる」という発想が寸毫も無く「死ぬ時は一緒」思想が徹底)

●『帰ってきたウルトラマン』(第五話「決戦!怪獣対マット」)
・MAT本部で、早急にツインテール攻撃を命じる長官とのやり取り
 郷「逃げ遅れた人間が5人、地下に閉じ込められています」
 長官「東京都民一千万人の命を守るためだ。この際5人のことは忘れよう」
 (→「東京都民一千万」を「本土」に「5人」を「沖縄」に替えて考えると…)
 郷「5人も一千万人も、命に変わりありません!」
 長官「長官の命令に背く者はどうなるか、知っておろうな?」
 長官の前でMATのバッジを外して、MAT司令室を出てゆく郷
 (→映画「2/26」のラスト青年将校たちが階級章をはぎ取られるのの逆)
 長官「なぁに、いざという時はウルトラマンが来てくれるさ、ハハハ」
 (→結局、在日米軍任せかよ)
 すかさず司令室を出て郷に一人でつっこむMAT上野隊員
「お前何のためにMATに入った? MATに入って何をしたっていうんだ?
 帰るところがあるからって、これじゃ無責任すぎるじゃないか!?」
 その後さらに、単身アキの救助に行く郷を手伝いに来た上野隊員
「俺はお前のように帰るところがない、だからMATに賭けてるんだ」
(→郷と上野の違いは、まるで応召軍人と職業軍人の違いに見える)

●『イナズマンF』(第12話「幻影都市デスパーシティ」)
・デスパーシティのサイボーグ兵士要員ハント
「いやだー、助けてくれー」と叫びながら走ってくる少年
 追ってくるデスパー兵士と、デスパーシティ市長サデスパー
「ここでは15歳になるとみんなサイボーグにされてしまうんです」
(→まるで徴兵じゃねえか)
・デスパーシティ内部の協力者の弟
 (実は裏切ってイナズマンをデスパーに密告していた)
「俺はデスパーシティの外に出たかったんだ?」
 (上原氏が『七人の刑事』用に考えていた幻のシナリオ腹案「パスポート」(米軍占領下当時の沖縄から出たかった若い男の話)とそっくり)

●『宇宙刑事シャリバン』(第42話「戦場を駆けぬけた女戦士に真赤な青春」)
・ダム地下の秘密基地に向かう伊賀電と、同志のイガ星人戦士のベル・ヘレン
 ダムの上で思いつめた顔の婦人(実はレイダーの刺客)を見かける
 基地に来て
 伊賀電「いいかいヘレン、俺以外の人間に、あのドアを開けちゃいけないよ」
 伊賀電が去ったあと、ダム上をモニター監視するベル・ヘレン
 さっきの婦人を「自殺するつもりじゃ……?」と飛び出してしまう
 謎の婦人が男と一緒に写っている写真を見るベル・ヘレン
 ヘレン「どなたかここで(亡くされたんですか)?」
 謎の婦人「このダムの建設に関わって、豪雨の時に見回りに……
 強引にでも、引き止めれば良かった……」(まるで戦争未亡人のようだ)
 (一瞬、オーバーラップする、ヘレンの同志が殺された場面の回想)
 結局、不意打ちにやられてしまうベル・ヘレン
 助けに来たシャリバン
 ヘレン「シャリバン、ごめんね…」
(→洞窟みたいな場所で、篭もってないといけないのに、人を助けるつもりで
 当人は良かれと思って出て行って、死ぬ、というパターン)

――まあしかし、ご興味を持たれた方は、上原氏自身の著書『金城哲夫 ウルトラマン島唄』筑摩書房)と切通理作『怪獣使いと少年』(宝島社)をご一読されるのが一番お勧め。