電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

ムカつくのは遠くの金貸しより近所のよそ者

ついでに、この「半径30メートルがその人の世界」論を先日のワイマール共和国話にこじつけて補足。
ワイマル共和国時代のドイツにアメリカ大衆文化が大量流入したことは先にも触れた。
WW1(第一次世界大戦)から1920年代、ハリウッド映画をはじめとするアメリカの大衆文化が世界に広まった背景には、伝統あるヨーロッパの娯楽産業(20世紀初頭の段階で映画の最先進国はリュミエールのフランスであった)が、大戦のため映画も音盤もそうそう作れなくなり、代わりに米国式の娯楽産業が大量輸出されたという事情がある。アメリカは文化でも戦勝国の筆頭となったわけである。
が、当時、ワイマル共和国右翼に反米ムードが漂ったという記述はほとんどない。巨額の賠償金を背負ったドイツ人の金玉は大西洋の向こうのアメリカ資本に握られていたわけだが、彼らの直接の憎しみの対象になったのは、東欧から流入してきたユダヤ人やスラブ系人種の難民たちだった。そんな海の向こうの顔も知らん連中より、目の前であふれ返ってるよそ者の方に敵意を抱くのは、人間心理としてさもありなんことだ。
翻って今の日本はどうか。
バブルは85年のプラザ合意によってアメリカに仕掛けられた物だったとか、自由化の名のもとに貧富の差を広げる小泉改革アメリカの圧力だとか言っても、そんなもんわたしにもピンとこない。それより土下座外交を要求して「日本人であるというだけで悪者」と呼ばわる中・韓の方がわかりやすくムカつく対象であるというのも、まあ、共感するかは別として、納得はできる話である。
ちなみに、WW2(第二次世界大戦)後のドイツ人は、悪い事の責任はナチスに押し付け、名より実を取ったんだろうと思う。EUの名目上の盟主はフランスでも、NATOの制式戦車は敗戦国のはずのドイツ製のレオパルド。日本はなぜこうできなかったのか……。