電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

落日の「日の出町」

中津というのは一応は特急の停まる市だが、その特急ソニックというのがたった四両編成だったりするから威張れない。
福沢諭吉は中津藩の出身で、同地はこれを観光資源のひとつにしているが(一万円札の図案を描いたせんべいなどを売っている)、そもそも下級武士の出身だった福沢翁は少年時代中津藩ではロクな思いをしておらず、一念発起して蘭学を学びに脱藩したのだから、「中津が諭吉を育てた」などと誇るのは、当人が聞けば苦笑するかもや知れぬ。
つい数年前には、同市が経営する中津競馬が累積赤字を抱えた末に廃業に至り、その不始末で市長の首が替わったというが、地方都市の例に漏れず、同地もやはり衰退傾向にある。
中津駅を降りると、日の出町商店街というアーケードがあるのだが、案の定、日没前からシャッター通り商店街と化していた。同じアーケードでも東京の中野ブロードウェイはえらい違いだ。
兄貴の奥様によれば、地方都市ゆえアーケードが災いして、自動車客が寄り付かず、郊外型ショッピングセンターにしてやられているという。いづこも同じである。なんとアーケード内のテナントを一部潰して駐車場にしている。
それでも、28年前に時どき買い食いしていた、回転焼きとういろう饅頭の店は存続しており、いまだに一個50円で売っていたし、かつてガンダムの映画を観た劇場(同時上映はリメイク版月光仮面で、ブルース・ブラザーズの予告編をやってた)もまだあった。