電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

2004-10-04から1日間の記事一覧

半端な悪党 矛盾する行動のリアルさ

『藪の中』の盗賊多襄丸は、殺しも強姦もやるだろう悪党だが、(状況的には彼のせいでも)直接殺したわけでもないかも知れない相手のことを自分が殺したと言ってみたり、悪党なんだからエゴイスト一辺倒でもない、どこか自分で自分の悪事の範囲を意識した人…

矛盾こそ世の中のあるべき姿?

論理的整合性のオチなどつかないブラックボックス小説といえば、こないだ初めて芥川龍之介の小品『藪の中』を読んだ(この歳まで、どんな話かは知ってたけど未読でした)。※以下ネタバレ注意。盗賊の多襄丸は「夫婦者を襲って女の方をレイプして夫の方と決闘…

ブラックボックスを意識する神の目

昨今の物語表現の悪い癖の一つは、何でも自己言及的に説明しすぎることだ、とか言われ紀里谷和明監督の『CASSHERN』もそう評されてたのを目にしたが、先日西尾維新を読み始めても少しそう思った。 『クビキリサイクル』を読んだ段階では、話の舞台となる「鴉…