電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

読書

アメリカの怖さを知る世代知らない世代

『en-taxi』で坪内祐三が、江藤淳は村上龍が出てきた当時その単純安易な「ヤンキーゴーム」的反米志向に反発というか違和感を覚えた、というようなことが書かれていた。 アメリカの強さ、安保体制下の戦後日本の我々は現実アメリカに依存せずして生きていけ…

ロマンという名のウソをつけ/ウソでも心が暖まるなら

『ダ・ヴィンチ』新年号特集「オタクの恋 もうオタクと付き合うしかない」 やはりいまいちの薄め感は否めず。しかし今や『ダ・ヴィンチ』は女性誌だから、あんまり本音丸出し過ぎてはそりゃ読者が引く、こんぐらいでも充分冒険であろうか。 滝本竜彦、大槻ケ…

地面とお天道様の必要性 『わしズム Vol.12』

既にあちこちで書かれてるけど、浅羽通明、宮台真司、宮崎哲弥、香山リカの揃い踏みは壮挙。バランスは良い。ゴー宣EXTRAと浅羽論考、「天皇家一族自身の人格は無視されてきたが、そういうシステムにわれわれは乗っかってきた」という天皇制批判でも擁護でも…

矛盾こそ世の中のあるべき姿?

論理的整合性のオチなどつかないブラックボックス小説といえば、こないだ初めて芥川龍之介の小品『藪の中』を読んだ(この歳まで、どんな話かは知ってたけど未読でした)。※以下ネタバレ注意。盗賊の多襄丸は「夫婦者を襲って女の方をレイプして夫の方と決闘…

ブラックボックスを意識する神の目

昨今の物語表現の悪い癖の一つは、何でも自己言及的に説明しすぎることだ、とか言われ紀里谷和明監督の『CASSHERN』もそう評されてたのを目にしたが、先日西尾維新を読み始めても少しそう思った。 『クビキリサイクル』を読んだ段階では、話の舞台となる「鴉…

「空虚な中心」を探して

那須きのこ『空の境界』上下巻やっと読了。 人為により世界の摂理に反する行為には必ず自然の「抑止力」が働くという発想とか、人格というのは脳の知識情報だけでなく肉体(による差し替え不可な経験、経歴、人間関係環境etc)で成立するものなのだ、とかい…