電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

非対称なる東西、非対称なる善悪

と、いうわけで、好評既刊『「世界の神々」がよくわかる本』(asin:4569665519)の姉妹編、今度は『「天使」と「悪魔」がよくわかる本』(asin:456966685X)が出ました。
今回は大まかには
 ・西方世界の天使:ユダヤキリスト教の天使
 ・東方世界の天使:仏教、イスラム教、ゾロアスター教その他の神の使い
 ・西方世界の悪魔:ユダヤキリスト教の悪魔
 ・東方世界の悪魔:ユダヤキリスト教以外の宗教、神話の悪神、邪神
という構成になってます。
前回はクトゥルー神話などという一風変わったものの担当だった当方は、今回はまたも「東方世界の天使」編などという、ある意味で変格的な部分を担当してます。
だいたい、「西方世界の天使」ならまあ、キリスト教文化圏のものが入るんだろうけど、東方世界の天使って何やねん? と考えるところでしょう。
本書での、洋の東西を問わぬ「天使」の定義とは、大まかに言って、神さん自体でなく、神の使いで、かつ人の形をしている者(つまり聖獣や神鳥の類は除く)と解釈させてもらってます。
ややこしいのは、西洋編(ユダヤキリスト教文化圏)は基本的に善神一神教なので、天使の定義も明確なのだが、東洋は仏教をはじめ多神教が多いので、「神自体ではなく、神に仕えるもの」と「小さめの神」の区分が曖昧になってしまうことです。
東洋編にはイスラム教、ゾロアスター教のものも入ってますが、純アジア圏のものでは、本当は仏教以外の道教支那土着のキャラクターも入れたかったのですが、これが難しい。
封神演義にも出てくる二郎真君(潅口)や、三国志にも出てくる関羽が神様になった関帝神は、「神の使い」と言うより「神格化された人物」なので除外。
とまあ、キリスト教文化圏以外では、「天使」(=善神の「使い」とされるもの)の定義は難しいが、皮肉な話、逆に「悪魔」の定義はしやすいような気がする。というのは、本書の悪魔編の方では、悪神、邪神、厄神とされる類ものを「悪魔」に分類してて、これならゾロアスター教のアフリマン、インド神話のアスラ、エジプト神話のセトなどが簡単に挙げられる、多神教ならむしろ、善神の敵役、自然の災厄などを象徴する神ってのはいくらでもいるからね。
で、結局、本書の東方世界の天使の項では、仏教世界の尊格の中での天部(帝釈天毘沙門天など)を、西方世界での天使に対置しました。ほか、いくつかの非キリスト教文化圏の、「天使」に該当するといえそうなものを取り上げてます。
――というわけで、一見して変格的な内容になっているとも言えるかもしれませんが、一応それなりに考えた内容とは自負しているので、既刊『「世界の神々」がよくわかる本』に興味を惹かれた方などは、気が向かれたら書店で手にとって見てください。