電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

【覚え書き】仕事のためもあり、最近観た戦争映画とか

  • 『英霊たちの応援歌 最後の早慶戦』(1979年/東宝/監督:岡本喜八
    • 「大学生」自体がエリートだった時代の話なんで、軍隊嫌いの大学生たちは、なんか偉そう
    • 兵学校での訓練シゴキの描写は喜八だからマンガ的だが、その裏にマンガ的にでもしなきゃ描けない悲惨さが漂う(『ハワイ・マレー沖海戦』兵学校の描写と表裏一体)
    • でもみんな最期は勇壮。家族を失って「『そいつのために死ねる』と言える相手としての女」を捜すのに「『祖国』を探しに」と言うのが絶妙(同じ喜八の『肉弾』と同じだ)
    • しかし『歴史群像 連合艦隊の最期』で、日本の学徒兵は連度が低く戦果が上がらず、仕方なく特攻作戦になった、なんて書かれてるの読むと複雑な気分になる。
    • ちなみに、アメリカ側はエリート学生の志願兵が実に多く、しかも有能だったとかで、元大統領のケネディニクソン、ジョンソン、レーガン、父ブッシュ、皆従軍経験者だという。
    • その背景には欧米には高貴なる者は身を張って義務を果たすべしというノーブレスオブリジェの考え方があるという。これは今の日本に一番欠けてるものだな。そういや昔から日本じゃ華族の子弟にも徴兵逃れが多かったとか……
  • 『海ゆかば 日本海大海戦』(1983年/東映/脚本:笠原和夫
    • 末端水兵の艦内生活描写が実に細かくナイス、白襟の将校との対比が効いてる
    • ガッツ石松の機関士とか『零戦燃ゆ』の整備士同様、「様々な人間によって兵器は動いている」という感じが良く出ている。
    • 家族と再会したばっかりに戦いに行く意気地が挫けた水兵ってのがまたリアル
    • 記念艦三笠を見てから観ると実感倍増!!
  • 『日本海大海戦』(1969年/東宝/主演:三船敏郎
  • 『戦艦大和』(1953年/新東宝/原作:吉田満
    • もっとも戦後間もない時期の作品で、一番淡々としている。
    • 甲板から艦橋を望む画面がマット画合成というのが低予算っぽいなあ。
    • 出演者に東宝戦争・怪獣映画お決まりの藤田進のほか中山昭二(キリヤマ隊長)までいた。
    • 期待してた甘い物が食えず、でも弟も海軍に入って欲しいばかりに「汁粉を食った」と書き送る少年兵が泣かせる。
    • 『沖縄決戦』にも引用された有名な白淵大尉の話の引き方は少し中途半端。
    • 船が傾き、浸水しまくる描写の悲惨さはさすがに実感がこもっていた。
    • ラストシーンはやはり、海上死屍累々に『海ゆかば』、これ定番だな。
  • 『君を忘れない(1995年/日本ヘラルト/主演:木村拓也
  • 『亡国のイージス』(2005年/松竹/原作:福井晴敏
    • 主人公が下士官なのは良いが、先任伍長少々スーパーマン過ぎ
    • 先任伍長が部下を思う態度はよくできてるが、クーデタ派の上官にデテールがない
    • 現代のイージス艦の中、とその鉄壁ぶり、弱点(水中の腹部)はよくわかった
    • 「亡国」を主張されてもその具体が感じられないのが仕方ない
    • 唯一、主人公が生き延びその後もしぶとく軍艦に乗ってる映画だ
    • 中井貫一の「亡国工作員」は無表情を貫いてて存在感があった
    • しかし、これは仕方のないことだろうが「平和ボケに戦争のリアリズムを突きつける」って言う方が観念的に見えちまうんだよなあ……

――海軍モノの作品ばっか見てると陸軍モノも見たくなるね。でも疲れる。そういや8月頭にやってた中村獅堂主演の小野田少尉のドラマは結構良かった。もとは「天皇は神ではない、人間だ」と理解もしていた合理主義者が、戦闘で戦友を無残に失う内に、その無念を無駄にしたくない思いで引き下がりようなく戦い続ける心情はリアルだった。
そういや『海底軍艦』もそんな感じだった。敗戦後も南島に残った轟天建武隊のメンバーは「靖国神社の予約番号」を腕に彫り込んで、捕まっても黙して何も語らず。神宮寺大佐は上原謙の元上官が説得に来ても応じず、戦後育ちの娘と最後までまったく和解しない。
狂信的だって? 「隣の人もそれをやってるから」という理由で資本主義正義真理教にハマれる現代人もいっさい変わらんよ。