電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

読みは「よしふる」と「さねゆき」です

PHP文庫『名将ファイル 秋山好古・真之』(松村劭:監修)発売(isbn:4569664504
わたしは
・第一章「秋山兄弟の生きざま」
・第四章「30分でわかる、日露戦争ダイジェスト」
・終章「秋山兄弟資料館」の関連人物解説の一部、ブックガイド等を担当
今年は大東亜戦争60周年と同時に、日露戦争100周年でもあり、これ以前にも日露戦争の簡単な入門書の類は多数出ているし、ハッキリ言ってしまえば、2006年放送のNHKドラマ『坂の上の雲』便乗企画で、PHPのよくある雑学文庫の一冊という枠内ではあるが、それでも、2005年現在、最新の視点による日露戦争本であることは太鼓判を押したい。
何しろ、監修は、元自衛隊の陸将補で『教科書が教えない日露戦争』の松村劭氏、漫画『日露戦争物語』の江川達也氏インタビューに、『日露戦争 もうひとつの「物語」』の長山靖生氏の談話も入ってる、この他、戦史技術解説、ダイジェスト名場面マンガなどもついて、192ページの薄さとはいえ、これで620円はお安いだろう。文庫というよりムックだと思って頂きたい。
当初、日露戦争なんて自分ごときに引き受ける資格があるのか? と迷いつつ、しかし同時に、まあ、どうせ歴史雑学文庫のレベルだし、と矛盾した感情のまま引き受けたが、引き受けたからには力は尽くしたつもりではいる。
特に苦労させられたのは第四章だが、ここは自分としては日露戦争に至る歴史の功罪両面を公正に書いたつもりでいる。「日本にとっての白人帝国主義との戦争は、ペリー来航前、アヘン戦争から始っていた」というのは江川達也氏の意見だし、日清戦争での旅順攻略時の民間人虐殺報道など日本側も不備のあった点は、松村劭氏の前掲書でも触れられている。
本書の取材では、横須賀の記念艦「三笠」は、現代の感覚で考えると小さいとか(全長130メートル、「大和」の半分である)、江川達也氏は、本当は石原莞爾の漫画を描きたかった、また、自分の人間観は『BE FREE!』から一貫している、と熱っぽく語ってくれたとか(執務机の隣に、海軍の制帽をかぶった等身大骨格標本があった)、長山靖生氏の邸宅は、歯科医院と一体とはいえ4階建てでエレベーターがあり、書斎はどこぞのショボい専門学校の図書室を軽く凌駕してたとか、実にいろんな見聞をさせて頂きました。その成果を読み取って頂ければ幸い。
――さて、実は、第一章、巻末の関連人物解説その他で、初稿でミスを発見して赤入れしたのに、直しが反映されてない個所があります。ここでは書きませんが、発見した方には……わたしからは何も出ませんが、版元に通報頂けるとありがたいです(担当編集者の人も大変だったのだ)