電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

こんな『シン・ゴジラ』はいやだ!

もし仮に、「右翼的なエンターテインメント」と「左翼的なエンターテインメント」を、それぞれ純粋に徹底するとどうなるか?
○純粋に右翼的なエンターテインメント
・権力、体制はつねに正義である
・もちろん主人公はつねに体制権力に忠実な優等生
職業軍人は全員、清廉潔癖の聖人君子である
少数民族、異端、マイノリティはつねにすべて悪
・強い者が正義、貧乏人はすべて自己責任
・なんの変哲もなく、武力、財力にまさる者がつねに勝つ
・主人公側が属する陣営による殺戮、破壊は無条件に全肯定
○純粋に左翼的なエンターテインメント
・権力、体制はつねに悪である
・もちろん主人公は忠誠心ゼロの反抗的な性格
職業軍人は全員、卑劣で腐敗している
少数民族、異端、マイノリティはつねにすべて正義
・貧乏人は常に善人、金持ちや貴族は必ず悪者
・どういうわけか、武力、財力にまさる者がつねに負ける
・そもそも戦いを全否定、アクションやバトルが一切ない
――それぞれどっちも、果たしてそれで面白いですか?
「ウヨ的に正しいシン・ゴジラ」を完璧に徹底したらどうなるか?
日本民族は優秀であるから、ゴジラは秒殺されて何も問題は起きない
放射能を脅威として描くのは反原発厨だ、ゴジラの攻撃でみんな健康になる
在日米軍は正義の味方である、日本への核攻撃を検討するはずない
――こんなもんスリルもサスペンスも何もないわい!
「サヨ的に正しいシン・ゴジラ」を完璧に徹底したらどうなるか?
自衛隊は戦わない。日本人は全滅する
――これではそもそもお話が成立しねえよ!
この調子で「ウヨ的に正しい」パトレイバー攻殻機動隊をやると、主人公は最後まで警視庁に反抗せず何もドラマが起きないし、逆に「サヨ的に正しい」作品にしたら、主人公は何もせずテロリストが勝ってしまう。そんなもん面白いかってのw