電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

廣済堂出版『人間関係がニガテでもうまくいく天職ガイド』刊行!

isbn:4331511170)ハッキリ言って、広義のオタクタイプ人間のための職業ガイドである。
「自分は引きこもりで〜」、とか、「ニートで〜」、とかいう方に、いや、キミでもこんな仕事はできるかもしれないぞ、どうかね? と前向きな提案を試みる書を目指した。わたしにとっても他人事ではない。虫の良いきれいごとは抜きに書いたつもりである。
もっとも、100%在宅とか、完全に一人でできるとは言わないが、極力、人と接しない技能職ばかりを紹介している。
わたし(佐藤賢二)は、まえがきとあとがきの他、「趣味・特技が生かせる仕事」「文化・芸術に関わる仕事」などの章を担当。要するに一番、広義のクリエイター、オタクジャンルの部分担当である。
本書で取り上げた職業の「一部」は以下。
彫金師、デバッガー、株のトレーダー、版画家、彫刻家、イラストレーター、書道家、校正係、図書館司書、学芸員、人形作家、工芸官(お札と切手ノデザイナー)、長距離トラック運転手、配管工、森林官、夜勤警備員、鉄道検修、ひな鑑別士、検針人、etcetc……
特に、オタクジャンル系の職業としては以下など。
モデルガン製造、プロモデラーガレージキット原型師、兵器評論家、漫画家、アニメーター、ゲームプログラマー、CGクリエイター、ゲームシナリオライター、SFXメーキャップアーチスト、同人誌作家、特撮のミニチュア・プロップ作製、etcetc……
本書では内容に具体性を持たせるために、固有名は勝手に使いまくらせて頂いた。もう究極の羊頭狗肉というべきかも知れないが、本文中で取り上げた固有名詞の「一部」は以下。
Hide、手塚治虫富野由悠季ナンシー関虚淵玄石川啄木倉阪鬼一郎新海誠福井晴敏滝本竜彦ナカムラミツル樋口真嗣澁澤龍彦四谷シモン阿部謹也糸井重里海洋堂吾妻ひでおTYPE-MOON枡野浩一舞城王太郎戸田奈津子……
こんな固有名詞が乱発される職業ガイド本って、一体どんなもんやねん?
しかし、少々無念なのは、企画を聞いた時から『引きこもりでもできる仕事ガイド』とか『ネクラのための仕事ガイド』などという直截なタイトルにした方が、良い意味でも悪い意味でも絶対に注目されるだろうに、と思っていたのだが、版元が中途半端に健全前向きに仕立てた結果、本来の層に届き難い本になってしまった印象は否めない。
担当編集者としては、想定読者の一部にアキバ系の中の引きこもりタイプの人を考えていたようだが、あんまり秋葉原で売れてくれそうな本にはなり得ていない感。
それでも、本書中のインタビューの一本では『Zガンダムヒストリカ』でもお馴染みのライター・図版屋神北恵太氏にご登場頂いた。
本当は漫画家の雑君保プ先生にもご登場頂きたかったが実現せず残念。
それにしても、本書執筆中痛感したのは、広義のクリエイター業界というのは、やはり人脈で回っているということである。映画業界なんて実質「就職」じゃなくて「潜り込む」しかない場合も多い(笠原和夫も業界関係者と親しくなって入り込んだし、樋口真嗣だって撮影所のアルバイトあがりだ)。
才能があれば突破できるとは言われても、人の縁、時の運などの要素は確実に大きいのだ。
各人の志と才能プラスそんな偶然の組み合わせの奇跡の物語として読むと『GAINAX INTERVIEWS』は歴史証言として感動的な書物である。