電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

凡才はミスをする、天才はミス「も」する

これまた仕事上の調べもの関連ながら、ドストエフスキー罪と罰』のラスコーリニコフポルフィーリィ判事の会話の部分を読み返す。
ラスコーリニコフの、マホメットやらナポレオンやら(1953年に初版刊行された手塚治虫の漫画版『罪と罰』では、ここにスターリンアイゼンハワーの名前が入ってるのがご愛嬌)は多数の人間を死に追いやったが英雄と崇められたのだし、天才には、時としてその偉業を成すため人を犠牲にすることも許される(んじゃないか?)……という、例の論が語られるくだりですな。
しかしだ、考えてみたらナポレオンにせよ、ラスコーリニコフが名前を挙げた他の「非凡な人々」にしても、確かに多くのポカ「も」やったが、それは地位と実績ができてからの話だ(無論、じゃあ努力して地位と信頼を得た人間なら何やっても良いってわけでもないが)、ラスコーリニコフがぶっ殺した金貸しババァは確かに同情の余地ない人間だが、これをぶっ殺した段階でのラスコーリニコフは、ただの一介の無名の貧乏学生でしかない。
なるほど確かに優秀な仕事も多数こなしてる人間がたまにポカ「も」やれば大目に見てもらえることもあるが、わたしのようにたいした仕事もしてない奴がポカ「を」やるのは問題だろうな。
まっ、過去の仕事のポカを挽回すんには、今後の人間的業績しかねえんだろうなあ……