電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

必然あるシンクロニティ

『TONE』第2号の戦争特集で『はだしのゲン』についての短評を書いたら、見事なタイミングで『ダ・ヴィンチ』8月で呉智英夫子の連載「マンガ狂につける薬」にも『はだしのゲン』が『拝啓マッカーサー元帥様』と共に取り上げられた。
ゲンと隆太がお手伝いに行った先の絵描きの政二おじさんのエピソードが引用されているが、この話、わたしも『TONE』の原稿で、変節者町内会長のおじさんと並べて取り上げたかったのだが、字数の関係でやむなくカットしたので、まさに相互補完的内容と勝手に思っております。夫子ありがとう。
かつてはその絵描きの才能で家族にもチヤホヤされてた政二おじさん、だが被爆して全身大火傷となり、生きながらいして腐臭を漂わせる肉塊となった彼を、家族は掌を返したかのように厄介者として扱い、陰では早く死んでくれることを願う……この話、ガキの頃は本当にトラウマだった。
戦争において恐怖の象徴となるのは、敵兵や敵の兵器より、戦争という状態によって変節する、いや本音を露呈させられる隣人なのだ。
思えば、永井豪デビルマン』漫画原作版クライマックスの悪魔狩りの集団ヒステリーの描写とか、70年代の傑作マンガはそんなんばっか描いてきたものである。
んが、ここへきて、911以降の、顔も知らん異物としての他者の恐怖ばかりを描く言説の流行は、想像力の欠落じゃねえかと思えてならない。
中沢啓治はアカだって?そんなこたぁ知ってる『はだしのゲン』はもはや単純な左右のイデオロギーなど超えた怨恨怨念漫画だから傑作なのだ。
考える事は皆同じか、そういや『ダ・ヴィンチ』8月号「戦争と戦後を考える35冊」と題して、筆頭に『TONE』第2号でも取り上げられた『男たちの大和』や『夕凪の街 桜の国』が挙がってた。
とか思ってたら、これまたタイムリーに『Official File Magazine ウルトラマン』講談社)のVol.2に上原正三インタビューが掲載、さらにVol.6では『帰ってきたウルトラマン』第33話「怪獣使いと少年」を特にクローズアップ。しかもこの記事書いてる吉沢晃一氏は『架空世界の悪党図鑑』でもご協力、ご一緒させていただいた間柄であった(ただし奥付に名前が落ちてますが…)
と、書くと宣伝くさいが、いや本当に書店で手に取って初めて知った。いやマジ。
と、いうわけで、わたしの拙文と併せてお読み頂ければ幸い。