電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

怪奇大洞窟 クトゥルー様の社

ちょうど丸一年前、はからずも「武蔵野シベリアの多摩グラード」を見物したが、先日いきなり、また取材と称して聖蹟桜ヶ丘(東京都日野市)などという場所に行ってきた。ハッキリ言って、友人が住んでるでもなし、こんな機会でもなければ行かないわな。
で、その「取材先」のひとつが桜ヶ丘公園、駅からえんえん歩いてったら、途中、閑静な高級住宅街の中にフランス料理屋が、うわ、ずばり『女王様と私』に出てきたような店?
と、桜ヶ丘公園の入り口前に、いきなり満洲開拓受難者慰霊碑が。
嗚呼、岸信介に唆され、松岡洋右に騙され、甘粕正彦に酒飲ませてもらったはいいが、満洲の土となった人々よ……とか思ったが、満鉄とも満映とも関係ない農村出身の素朴な開拓農民だったら、以上の誰とも接点ないままか?
で、聖蹟記念館、ちょうど別件の仕事絡みで、『明治天皇と日露大戦争』ほかの新東宝ラカン明治天皇シリーズを観た直後に、明治天皇ゆかりの地に来るとはなあ、などと思っていたら、異様な物を発見する。
ここの公園の森の中に建つ記念館には、明治天皇と幕末維新期の文物のほか、多摩の開発史にまつわる物も展示されているのだが、その中に、ガラスケースに入った、恐らくは戦前の多摩の観光パンフレットのようなものがあった。その表紙の右上の文言がなんか凄い
「帝都南郊の緑地々帯――怪奇大洞窟」
怪奇大洞窟って何だよ! 別府温泉地獄めぐりみたいなもんか?
パンフレットの発行者は「南武電車」、電話番号は、局番無しで、川崎とある隣に八桁の数字、電話が交換局を通してた時代のものか。
それにしても、中野区のせせこましい住宅街の中にいると、多摩の公園風景は、ちょっと新鮮だった。森の中にいきなり巨大な電線鉄塔が建ってる景色など、ありきたりのようだが、『新世紀エヴァンゲリオン』の一場面のように感じられてしまう。
で、帰る途中、駅のすぐ側に「九頭龍神社」があることに気付く。クトゥルー様だ!
これまた別件の仕事絡みでラヴクラフト読んでたら、何たる偶然、ではお参りしよう(おいおい、それはただの当て字だろう……)と、ふざけたことを考えて、公園の外れの社を探したら、おそろしく小さかった。お賽銭も入れなかった、だって、お賽銭箱がなかったから――でも、来た時に駅降りてすぐの赤い羽根募金には切符のお釣りちょっとだけ入れたから、それで天に財を投じた事には……ならんか