電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

敢えてズレた後出しジャンケンを書く

先日、旧い友人から旧ソ連軍のT-34戦車を2台、譲ってもらった。
現代最新の対戦車攻撃ヘリのアパッチなどには到底かないそうにもないが、さすがに『馬鹿が戦車でやってくる』でハナ肇が乗ってたような旧日本軍の豆戦車とは重厚感が違う。
こいつに乗ってハナ肇のようにぶっ飛ばしまくれたらさぞや爽快だろう。ただ惜しむらくは。このT-34は1/144ってことだが(笑)
海洋堂の造っている戦車模型の食玩ワールドタンクミュージアム」の一品である。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~captain/toys_024.htm

この「ワールドタンクミュージアム」で解説イラストを描いてるモリナガ・ヨウ氏は、最近では模型雑誌の『モデルグラフィックス』で御馴染みだが、わたしとしては、10年程前、今はなき『宝島30』によくマンガやイラストを描いていたことで懐かしい。

『宝島30』休刊時に、今後の仕事をどうしようか云々と書いてるのを見て心配していたら、ここ数年、趣味に居直って模型誌で大活躍、それも、ただおたく的な軍事兵器知識一辺倒でもなく、戦時中の世相や社会的背景への私見を交えたり、自らの模型少年体験を交えた筆致はなかなか好感が持てる。

そのモリナガ・ヨウ氏が言いえて妙なことを書いてたのが、戦時中のドイツ軍は兵器の性能に関しては圧倒的だったんで、「個々の戦闘には勝ったが(質が高い分量産に向かず)、戦争には負けた」という表現だった。
世の中、力それ自体では勝てても、そんだけでうまくは行かんのだなあ、というハナシ。
(ちなみに、T-34はドイツ軍戦車と比較すると、個々の質は低かったが量産性と頑丈さが桁外れで、それが最終的な旧ソ連軍の勝利につながったとよく言われる)

さて、ひとまず終わったことになっているイラク戦争について、『YOMIURI Weekly』(週刊読売)が
http://y-mag.yomiuri.co.jp/yw/yw_main.htm
イラク戦争 終結へ 誰が「誤算」していたか 朝日、毎日、ワイドショー“反戦メディア”の無責任」という記事を書いている。

なるほど、米軍に共感できないわたしとしても、「戦争はよくない」「米軍が正しいとは思えない」という感情的認識を、そのまま「今回米軍は勝てない」「ベトナム戦争のように泥沼化する」という誤った予測に結びつけて語ってた連中の現実認識の浅さにはさすがに違和感を覚えずにいられなかったし、こういう、報道メディア自身による検証は貴重なので、見出しを見てちょっと感心した。

……ところが、実際に読んでみると、なんのこっちゃ「そら見ろやっぱり朝日・毎日系メディアの予測は外れたじゃないか」という、実に皮相な後出しジャンケンの感が否めず、安易に願望と予測を混同するメディアの責任検証という趣旨に意義はないが、これまた品性の欠ける安易さを感じてしまった。

いや、今になってこう書くのもそれこそ後出しジャンケンだが、わたしも、この戦争アメリカに共感はできんが、そりゃアメリカは物理的な軍事力じゃ圧倒的なんだから、戦闘それ自体にはさっさと勝つに決まってるさ、と思ってた。
が、問題はその後だ。勝って占領支配をどんだけうまくやれるのか。それ次第それこそ、かつてのドイツ軍のように、戦闘に勝っても戦争自体はどうなるかわからんのである。
(まあ、ヒトラーは、例えば、スロヴァキアと結んでチェコを封じ込めるなど、占領支配も局所的には巧みだったが、さてブッシュJr.君の手腕はどうか?)

――とか思ってたら、『YOMIURI Weekly』を更に検証するように『ニューズウィーク』は
http://www.nwj.ne.jp/
「■徹底検証 平和への試練 バグダッド陥落は新たな闘いの始まりにすぎない――」
なーんて記事見出しを掲げている。

で、米軍のイラク占領民主化政策は、60年前の日本のそれが念頭にあるらしいが、果たしてそれはどの程度普遍性があるのか? 日本だからたまたまうまくいった、という点も大きいんじゃないか……といった話で書きたいこともあるんだけど、それは以下続く。