電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

唐沢寿明の『白い巨塔』リメイク版がなかなか好評だという。

http://www.fujitv.co.jp/shiroikyoto/index2.html
というか、昨今、昔のTVドラマとか映画とか漫画やアニメのリメイク、続編はすっかり珍しくも何ともなくなった。
そこいらのガシャポンで昔のアニメや特撮ヒーロー物のフィギュア、グッズが大量に売られているし、NHKプロジェクトX』のヒット、浦沢直樹の『20世紀少年』や『クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲』など、60年代ノスタルジーを題材の一面に取り入れた表現は少なくない。
果ては「ぼくの学校」シリーズとか、タカラの「昭和の音」シリーズとか、何の変哲もない小学校の風景や昭和30年代の町の風景の再現ミニチュアが商品になる位だ。

こうした一連のノルタルジー商品というものは、やっぱある意味で、一面、時代が急速な勢いで共通基盤を失い、人々がバラバラになりつつあり、そのことに無意識のうちに不安に感じたりしてる中、かつて誰もがみんな見たもの、体験した風景を求めている、という需要なんだろうなあ、と感じたりもする。
実際、2ちゃんねるの特撮板とかに行くと、30代40代の人が、親子で昔の仮面ライダーウルトラマンを見て、結構子供にもウケている、なんて話があったりして、そういう話は微笑ましい。

以前勤務してた職場でも、パソコンデスクの上にチョコエッグのおまけやSDガンダムの林立してる人は少なくなかったし、わたし自身も、金と暇に余裕があれば、この手のノスタルジーミニチュアグッズの類で集めたくなるようなものは数限りなくある。
もはや単なるオタクグッズという枠に留まらず、戦後日本人の共通記憶を具象化するまでに至っているという意味で、海洋堂は今の日本で非常に良質な仕事をしている企業だと思う。

もっとも、皮肉な言い方をすれば、これも、現実にそういう風景がすっかりもはや死んだ過去のものになったからノスタルジーの対象になってるわけで、そうしたグッズを好む人間が、じゃあ本当に昭和30年代そのままの、うるさい祖父母や鼻水垂らした幼児が同居し、柱の黒ずんだ木造家屋で、一個しかないテレビのチャンネルを奪い合う生活に戻りたいかと言えば別だろう。
(そういや、岡崎京子の『ジオラマボーイ・パノラマガール』では、主人公が、自宅の昭和40年代まんまの花柄ポットを嫌って、わざわざモノトーンの今風にカッコいいポットを買ってくるんだが、母も祖父母も使ってくれず「お前の嫁入り道具にしなさい」なんて言われちゃう場面があったな……皮肉にも、今やこれこそが80年代の歴史民俗資料である)