電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

あえてアングラ風を装うことの意義

悪徳商法マニアックスのBeyond氏は株式会社ウェディング絡みの一件で、結局、匿名性を放棄して表に出ることになった。彼の正体は、何のこっちゃ消費者問題の相談員であったという。ま、そりゃ、まったくの一般人よりは、悪徳商法やらクーリングオフやら裁判やら弁護士に詳しいのも当然だったろう。
だったら、はじめっから、あんな黒い背景のアングラ風の雰囲気のサイトなどにせず、自分は消費者問題の相談員だと名乗って、もっと公式な権威あるサイトらしく作っておけばよかったのに、という声があるかも知れない。
実際、Beyond氏を訴えたウ社は、悪マニを一方的にいかがわしい人物のやってるガゼ情報ばかりのアングラ系サイトのようなものと思い込んで、じゃあいっちょ「大人」が権威で脅してやれ、と思って警察を動かしたり訴訟をちらつかせたのではないか、という可能性がある。
しかしBeyond氏は、あえてわざと、ずっと悪マニを、一見して不真面目な、いかがわしいアングラ系サイトのように見せかけてやってきたんだろうと思われる。
その理由として考えられるのが、例えば冒頭のような雰囲気だ。
大真面目に悪徳商法やら消費者問題を取り上げても、面白味がないし人目を惹かない、そこで一見いかにも、いかがわしいアングラ系サイトのような雰囲気を作って、運営者自身、消費者問題の専門家なんかではなく、一介の「悪徳商法ウォッチマニア」というふりをしてみたら、案外とその敷居の低さの結果(確かにいかがわしいだけのガゼ情報も集まってきたろうが)、気軽に有用な情報が集まるようになった、ということではないか。
これは公式的役所的なものの限界を、ネット的シロウト的なものの偶発性が勝った貴重な例のひとつだとは思う。
例えば、ミュージシャンでも漫画家でも学者や小説家でも、個人のやってる、それについての「ファンサイト」は、結局、当り障りのない公式的賛辞しかなくなるものだが、案外と、それらに関する2ちゃんねるのスレッドの方が、忌憚なき本音評価の毀誉褒貶が読める、それと同じようなことだろう。