電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

みんな傍観者じゃ話がつまらねえ 『仮面ライダー剣』

ライダー、ヒーローといやこれだ。2年前の今頃「もはや正義も悪もない万人の万人に対する闘争」の『龍騎』は観てて落ち着かないが斬新さは認める、と書いた、去年の今頃、で、古典的な善悪図式を復活させた『555』は白々しく見えてしまう、と書いた。『剣』は更につまらなくなった印象だった。放送始まって早々、仮面ライダーブレイド剣崎の先輩で兄貴ポジションの筈の仮面ライダーギャレン橘が戦いを嫌がり苦悩する展開にゲンナリ。何より面白くないのは、敵アンデットにシリーズ通じての強敵が出てこず、たまに強そうなのが出たと思ったら、ほぼ決まって、自身は戦わず傍観者に回って漁夫の利を得ようって奴ばっか、でも結局すぐ退場になる。少しに出たやっと大物感の「キング」もそんな奴だったし。今やこういう敵像がリアルなのはよくわかる、が、リアルにやると面白くないのがよくわかる。ヒーロー番組なんだからよぉ、支配や征服を企む敵じゃなきゃよぉ。
だが、本来動機のない恵まれた温厚な坊ちゃんだが、だからこそそんな自分に苛立ち強大な力を求め魔道に惑う仮面ライダーレンゲル睦月のキャラは、その現代的さが良いと思った、ここ最近の、力を求めて人間やめかける睦月と、逆に、本来は人外の怪物アンデットだったのに人間の心を持つに至った仮面ライダーカリス相川の対比は面白い。
今さら言うまで無く、70年代ヒーローは、不良品の改造人間や人造人間(初代ライダー、キカイダー)や悪魔(デビルマン)とか異形の人外の境界の者で、それが80年代以降、皆ただの強化服を着た普通の人間になってった。平成ライダーは特に、現代生きてる生身の役者が演じるんだし、80年代〜90年代に発展したアニメに対し「特撮だからってバカにするな」って対抗意識もあってか現代的リアルさを追及してんだろうが、ここに来て、いろんなジャンルで70年代に異形の人外の境界ヒーローが復活してきてるような傾向を感じなくもない。それが何を象徴するかは無理にこじつけも可能だが、しばらくは安易に答えを出さんでおこう。