電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

この世に楽な仕事などない

毎日手を変え品を変えエロスパムの類が大量に届く。
「嘘子です、会ってください」「嘘美だよ、覚えてない?」といった架空の女性からのメールを装った物はもう当然、お金をくれる女性を紹介しますという超絶非現実的内容のも相変わらずだが、「逆援交」というキーワードは手垢がつきすぎて単語登録でゴミ箱直行にされると思ってか「逆サポート」なんて新語を作ったり、エロスパム送信者の懲りなさ飽きなさ加減には途方に呉れる。
だが、どー考えても、架空女性からの持参金つき交際希望を名乗るにしても「こんな女いるわけねえだろ」「コレ、書いて送信してる奴自身の願望だろ」というような代物か、書いて送信してる奴自身が「こんなもん受け取って引っかかる奴はバカだ(藁)」とでも、内心で「客」をバカにしながら書いてるであろうことがありありとわかるようなものばかりである。
ハッキリ言っていい加減、送信している側も、こんなもん引っかかる奴はいないと気づいてやめてくれないかと思うのだが、悪徳商法従事者の心理というのはそうでないらしいのかなあ、と考える。
つまり、引っかかる奴がいなければむしろ却って「いや、誰か引っかかってくれるはずだ、頼む! 誰か引っかかってくれ!」とますます躍起になっているのではないか? 競馬で作った借金を競馬で返そうとする心理のようなもんである。依存症、中毒患者の心理だ。
その昔、まったく偶然に兎が一匹切り株に頭ぶつけてコケたのを捕まえて、以来、切り株の傍らで座ってりゃ、何もしなくても兎が捕まえられると思い込んだ農夫と同レベルの思考である。
しかし、悪徳商法というのは、ひっかかるのが100万人に一人でも、その一人から効率よく搾取できれば採算が取れると聞いたことがある。実際、振り込め詐欺では、引っかかって払った相手に、さらに「期限切れなので追徴金が」「手数料が」「更新料が」「利子が」などと名目をつけて払わせるのだそうだ。それで払う方も阿呆だが、さすがにこんなに次々請求が来るのはおかしいと思って通報されることもあるという、そんな欲張りすぎりゃバレるっての。
ネットワークビジネスMLM)にしても、路上キャッチセールス男にしても、この手の事業者の心理がしゃらくさいのは、客は(騙されて)そっちから気持ちよく乗ってるんだから何が悪い、という論理で自らの罪悪感をゴマカシつつ、同時に、自分らはまともなサラリーマンに対し、少ない労力で頭の悪いカモから効率よく最大限の収入を得てる、そんな俺ってフツーの勤め人と違って、ワルで、頭良くて、世の中のウラに面してるようで、そんな俺ってカッコいい、とでも勘違いしてるのではないかと思われる点だ。
わたしが、正業を持ちつつその傍らで小遣い稼ぎで株をやってる人ならいざしらず、日なが株だけやって、そこのことをあたかも、むしろ自分が資本主義を動かす側の人間で「神の視点」の持ち主であるかのように気取る人間をいまいち好きになれないのも、それと近い物を感じるからである。
社会は騙し搾取する奴と騙され搾取される奴で回ってるのではなく 協働で回ってるはずではないのか?