電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

空気を読んで崖下に落ちる

例によってまた何を今さらな話の後出しジャンケン的ツッコミ。
8月初め、東京ビッグサイトワンダーフェスティバル会場で、客の乗りすぎでエスカレーターが事故を起こし負傷者が出た。
ワンダーフェスティバルは模型・ガレージキット関係のイベントであるからして、客の多数はオタクだというので、事件直後は「オタク客はマナーがなってない」「いや、会場側の責任だ、オタク叩きをするな」という議論が一部で起きたらしい。
わたしはどっちも論点がずれていると考える。これは群集心理の問題ではないか?
会場のエスカレーターは、全段に二人づつ乗ると重量オーバーで故障する構造だったが、あまりにも膨大な客が集まったので、全段に二人づつ乗ってしまったそうである。
一般的に、エスカレーターに乗るときは各段の左側に詰めて乗り、お急ぎの人などのため右側は空ける、つまり一段につき一人というのが「慣例的な暗黙の了解」となっている。
だが、これは「慣例的な暗黙の了解」であって、法律や条令で明文化されて決まっていることではない。地下鉄の駅などでも、非常に込んでいるときは、エスカレーターの各段に人が二人づつ乗っている場面を見かけることはある。
東京ビッグサイトワンダーフェスティバル会場入り口を想像してみよう。自分の前に並んでいる人間は全員み〜んなエスカレーターの各段に人が二人づつ乗っている、自分の後ろにはまだずらずら人が膨大に並んで先を急げとせかしているように見える……そりゃ、一段に二人乗っちゃうのが人間心理だろ? とくに「空気の読める」日本人なら。
これはまったく悪意なく「空気を読んだ」結果だ。ここで一段に一人乗るべきだなどと言い出せば「空気が読めない」と見られたであろう。
が、なまじ空気を読んで空気に従うと、レミングの群のように揃って崖に落ちることもある、という事例である。
ことは別にワンフェスのオタク客に限りはしない。きっとどこでも起きえる話だ。