電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

「バブルすごい」のディトピア

日経新聞の正社員様によると、デフレ不況は若者が消費しないせいらしい。 インフレ知らず悲観的…物価2%、ゆとり世代が壁 :日本経済新聞 http://b.hatena.ne.jp/entry/www.nikkei.com/article/DGXLASGF24H0E_V21C16A0SHA000/ 阿呆か。 日経新聞の正社員様…

『古事記』の時代にサザエさんはいましたか?

なんでも日本会議によると、日本の模範的な家族像はサザエさん一家であるらしい。 日本会議「理想はサザエさん一家」啓発 24条改正巡り 毎日新聞2016年11月3日 02時30分(最終更新 11月3日 12時49分) http://mainichi.jp/articles/20161103/k00/00m/040/159…

すべてのエンターテインメントはプロパガンダになり得る

急いでつけ加えておくが、わたしは今回、漫画や映画やアニメやゲームや小説などを「右翼的な作品」「左翼的な作品」に分ける気は一切ない。というか、それは一番不粋でつまらん行為である。 作品が娯楽として面白いか面白くないかと、ウヨ的かサヨ的かは関係…

こんな『シン・ゴジラ』はいやだ!

もし仮に、「右翼的なエンターテインメント」と「左翼的なエンターテインメント」を、それぞれ純粋に徹底するとどうなるか? ○純粋に右翼的なエンターテインメント ・権力、体制はつねに正義である ・もちろん主人公はつねに体制権力に忠実な優等生 ・職業軍…

ヒロイズムの否定しかできない左派の愚

このブログでは毎度のように周回遅れで後出しネタだが、今さらこの辺の話について。 https://twitter.com/kabutoyama_taro/status/770565856199790592 『シン・ゴジラ』に限らず、ここ数年というもの、自衛隊ともコラボした『ガールズ&パンツァー』だの『ゲ…

また再録

かつて雑誌『TONE』第2号(2005年6月刊行)に執筆した原稿。 ■「戦争」を描いたヴィジュアル作品レビュー10 (1)映画『ゴジラ』(1954年)監督・本多猪四郎 【水爆が生んだ怪獣は、日本だけを襲う祟り神】 怪獣ゴジラが最初に銀幕に登場したのは、まだ戦争の記…

妄想

ところで、本作に登場しなかった今上天皇はどうしていたのだろうか。政府は退避を進言するだろうが、お優しい明仁天皇のことであるから、311の時から考えて、まずは「都民を置いて一人だけ逃げるわけには行きません」と発言しそうである。さらに都民に対し「…

「個としての人物」を描かないことで成立した傑作

で、公開から2週間も経つからもうネタバレも気にせず今さら『シン・ゴジラ』の話。 全体の印象 上映開始15分ほどで登場人物のあまりの多さに閉口し、名前と役職名を覚えることを放棄する。そして30分ほどして「ああ、これ岡本喜八の『沖縄決戦』と『日本のい…

ゴジラ対あまちゃん(ウソ)

――ときて、『ゴジラ対あまちゃん』があるとすれば、こんな感じか(入浴中に湯船に浸かって考えた妄想の類) 20XX年、復興が進みつつあった北三陸に、アキの祖父忠兵衛の乗った遠洋漁業の船が北太平洋で遭難し、生還は絶望的との報が届く。 ほどなく、ゴジラ…

ぼくのかんがえたさいきょうの「宮藤官九郎脚本のゴジラ」

オールド特撮オタクとしては、庵野秀明がゴジラの新作を撮ると聞いたときは少なからず期待した。そのとき脳裏をよぎったのは、若い頃の庵野らが1980年代当時に製作した『八岐大蛇の逆襲』とか『帰ってきたウルトラマン』のイメージだったのだが、劇場で予告…

こんな文豪ストレイドッグスの新キャラはいやだ

三島由紀夫:異能力「仮面の告白」 ところ構わず自分の腋毛を見て欲情 内田百間:異能力「件」 人虎ならぬ人面牛に変身 田山花袋:異能力「蒲団」 敵を蒲団でスマキにする 正岡子規:異能力「病床六尺」 敵を四畳半に閉じ込める 小林多喜二:異能力「蟹光線…

宮沢賢治はラノベ作家になり損ねたニート

別冊宝島『宮沢賢治という生き方』(isbn:4800254256)が刊行。当方は今回、鉱物、音楽、星、農、岩手の郷土などに触れた冒頭カラー口絵と、宮沢賢治の少年時代、女性関係、法華経信仰、晩年のサラリーマン生活などの生涯を追った第1章を担当。 清貧でも自…

カルトの「魅力」とは何か?

――と、以上のような理屈を幸福の科学の会員にぶつけても、たぶん効果はない。人間には、ネット上の名前も顔も知らんどこかの誰かの批判より、直接に面識のある仲間(同じ信者)の言うことの方を信じる心理がある。 これはカルト宗教に限らず、右や左や上や下…

宗教の分類は教義より信仰の実践形式

熊本震災の発生以降、また過剰な「不謹慎狩り」が続いているようだが、幸福の科学の地震便乗商売はもうちょっと批判されていいだろう。 http://togetter.com/li/963539 大川君にとっては、人がばんばん死ぬ災害も自説を宣伝する利用素材でしかないらしい。地…

くり返されるよくあるはなし

熊本での地震発生後、予想通り「被災地で朝鮮人が以下略」デマが発生したという。 ハイハイ、5年前の東日本大震災の時もありましたね、「中国人や韓国人が被災地で物資略奪」系デマ。 それで当人の主観では善意100%のまま裏取りもせずツイッターの内容を受け…

ぼくのかんがえたさいきょうの少子化対策

以上を踏まえて、わたしが考える有効性の高い少子化対策は「家業」の復活である。 少子化の発生以前は職住一体が当然であり、職住分離が家事と育児の困難の元凶だ。したがって、自宅で家事や育児をしながら仕事のできる環境を推進すればよいのだ。 だから、…

みんな勘違いしている少子化の原因

このブログで時期外れの話題を取りあげるのはいつもの話だが、「保育園落ちた日本死ね!!!」問題はいまだに尾を引いているらしく、4月に入っても山田宏議員の「親の責任だ」発言が炎上ネタになっている。 少子化の真の原因は「家業」でなくなったから しか…

あけましておめでとうございます

今年もよろしくお願いします。

列外(ワースト).TVアニメ『ガッチャマンクラウズ インサイト』

製作:タツノコプロ(http://www.ntv.co.jp/GC_insight/) 2013年放送の前作『ガッチャマンクラウズ』は、結局「ネットで直接参加民主主義になれば万事解決ユートピア実現」とでも言いたげな、余りに脳天気すぎる展開が鼻についた。製作と放送のタイムラグな…

10.ルポ『奇蹟』

曽野綾子:著(isbn:B000J8UNK0) 本年2月、アパルトヘイト擁護のごとき発言で叩かれた曽野だが、スクールマーケットの浅羽通明辻説法で「曽野の作品でもこれだけは本当に凄いぞ」と勧められた一冊。1973年刊行の作品だ。 第二次世界大戦の末期、ナチスの収…

9.ルポ『スエズ運河を消せ』『ナチを欺いた死体』

デヴィッド・フィッシャー:著(isbn:4760140204) ベン・マッキンタイアー:著(isbn:4120042995) 呉智英夫子が書評で2冊並べて紹介していた第二次世界大戦の裏話。 『スエズ運河を消せ』は、英国のマジシャンが軍に協力して北アフリカ作戦に参加し、はり…

8.評伝『近世快人伝』

夢野久作:著(isbn:4168130460) 幻想小説『ドグラ・マグラ』ほかの作者としての夢野ではなく、右翼壮士・杉山茂丸の息子としての夢野の本領が発揮された明治から昭和の人物論集。 なかでも、玄洋社をつくった頭山満の盟友で、薩摩長州藩閥の独裁に反発し続…

7.映画『黒部の太陽』

監督:熊井啓(http://movie.walkerplus.com/mv22183/) ご存じ三船敏郎と石原裕次郎が共演した60年代の映画。数年前のリバイバル上映はうっかり見逃して、今ごろやっとDVD視聴。 作品の本題は戦後の黒部第四ダム建設の話なのだが、劇中では戦前の黒部第三ダ…

6.評論『世界の辺境とハードボイルド室町時代』

高野秀行×清水克行(isbn:4797673036) 『謎の独立国家ソマリランド』(isbn:4860112385)の辺境ジャーナリスト高野と、日本の中世史を専門とする歴史民俗学者の清水のクロスオーバー対談。途上国の生活習慣とかには「日本も昔はそうだった」という点が非常…

5.映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』

監督:樋口真嗣(http://natalie.mu/eiga/pp/shingeki_movie06) 原作ファンには絶不評な本作だが、わたしは5年前に原作を初読して以来、ぜひとも実写特撮映画としてこの作品が観たいと思っていた。原作者の諫山創が『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対…

4.映画『ルック・オブ・サイレンス』

監督:ジョシュア・オッペンハイマー(http://www.los-movie.com/) 2013年に取りあげた『アクト オブ キリング』(http://www.aok-movie.com/theater/)の姉妹編。インドネシアで1965年に起きた反政府派大虐殺の「9月30日事件」の下手人たちを追及する話だ…

3.『GHQと戦った女 沢田美喜』

青木冨貴子:著(isbn:4103732075) 終戦直後の混乱期、占領軍の兵士が日本女性に産ませた「GIベビー」の捨て子のため孤児院を設立したお嬢様の一代記。 明治期から戦前に軍需産業などであこぎに儲けまくった三菱財閥(岩崎家)が敗戦によって没落する過程を…

2漫画『卑怯者の島』

小林よしのり:著(isbn:409389759X) 戦時中の日本兵が特攻や玉砕をいとわなかったのは、愛国心とか八紘一宇の精神なんてご大層な大義のためではなく、かといって郷土愛とか家族愛が全部でもなく、結局のところ"目の前の戦友"を見捨てられないという感情だ…

1.映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

監督:ジョージ・ミラー(http://wwws.warnerbros.co.jp/madmaxfuryroad/) これを挙げるのは凡庸だけど、やはりインパクト最大。方々で語られ尽くされてるけど、何も考えず娯楽作品として観ても、内容についていろいろ考えても奥が深い。 この作品でわたし…

2015年最後の挨拶とか年間ベストとか

なんだかずっと間が空いても年末だけは更新が定例化してきて申し訳ないですが、とりあえず今年の年間ベストが以下。 1.映画『マッドマックス4』監督:ジョージ・ミラー 2.漫画『卑怯者の島』小林よしのり 3.ルポ『GHQと戦った女 沢田美喜』青木冨貴子 4.映画…