電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

2007-01-01から1年間の記事一覧

予選敗退後の夏

那須きのこ『DDD』(第二巻)を読む。 第一巻では、この手のラノベ類の中では、メンヘラ系の人間の甘えへのツッコミが容赦なく、それでいて別に他人事扱いでバカにしているわけでもなく、「健全な身体あっての健全な精神」という自戒(この作品に登場する異…

戦後が舞台の戦争なき特攻映画

ついでに映画版『日本沈没』昭和版と平成版のDVDを立て続けに観てみる。 昭和版については多くのことが語られているが、これは本当に「日本人・日本民族」を描ききろうとした、「戦後が舞台の戦争なき戦争映画」である。もっとも、あの空気感は、まだ作り手…

国はなくても民は生きる

『天皇・反戦・日本 浅羽通明同時代論集 治国平天下篇』(isbn:4344013425)の最後のほうで興味深い紹介をされていた、小松左京『日本沈没 第二部』(小学館)を読む。 小松左京は本来「日本沈没」より、この「日本民族漂流記」がやりたかったという。 祖国を…

幽霊の話を書いた男の幽霊の話

PHP文庫『「幽霊・妖怪」がよくわかる本』 (asin:4569668879)発売中――って、単に激烈に忙しかったからとか、放っといたらとっくに納涼怪談シーズンは終わってしまった。 今回は「日本の幽霊」の章を担当、平将門とか菅原道真あたりから、番町皿屋敷のお菊だ…

サボリ宿題を慌てて出す

放っといたらまた2ヶ月近く間があいた。

真夏の死

70年前の7月8日というのは、とある男の命日だった。*1 スペイン内戦当時の人民戦線側の国際旅団で記録に残るただ一人の日本人義勇兵、ジャック白井。正確な生年月日はまったく不明、推定1900年頃、つまりおそらく享年37歳。 要するに今のわたしと同年ぐら…

外国にも「ただの国民」は多数いる

『論座』8月号を読むと、フランスのサルコジ新大統領についての記事が興味深い。 フランスといえば、アメリカ資本の進出を嫌う伝統的小売商支持者によって反マクドナルド暴動の起きる国である。だが、そんな同国にもアメリカ文化で育った世代が現れていて、…

25年前の大西洋戦争

私事で恐縮だが、昨年『図解「世界の紛争地図」の読み方』(isbn:4569667198)という本の仕事に携わった際、旧ソ連を含む欧州と、南北アメリカの紛争を担当したわけだが、南米の項目で1982年の「フォークランド紛争」を扱うことに、妙な違和感があった。 なん…

責任ある鼓腹撃壌のアナーキズム

ただし、浅羽通明という人物は、単なる奇をてらった毒舌偽悪芸が目的の人間ではない。 そもそも、1990年代初頭、浅羽氏は、新保守的志向による若手の左翼批判論客と見られて注目された。確かに当時、浅羽氏は『ニセ学生マニュアル 死闘篇』『天使の王国』な…

根源論だけしかない本

と、いうわけで『天皇・反戦・日本 浅羽通明同時代論集 治国平天下篇』(isbn:4344013425)を読む。 これは浅羽通明氏が20年前からやってる個人誌「流行神」のよりぬき版なわけで、今回は「治国平天下篇」と銘打ってあるが、今後、おたく世間人生論の「修身斉…

21世紀になっても本音を言えぬ日本人

お堅い金融機関 クルービズの波 三井住友銀、全店で実施 6月27日8時34分配信 フジサンケイ ビジネスアイ ■来月から環境重視アピール http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070627-00000004-fsi-bus_all 結果的には大いに結構であるが、本当はみんな、もうず…

露悪と礼節

先日、あえて学生時代の悪事のごく一部を自白したが、昔はわりと自己露悪的なところが強く、他人から指摘されなくても自分の過去の悪事など隠さず自己暴露していたほうだった。 なぜかというと、他人サマのことをいろいろエラそうに論評するくせに、では、そ…

ぜーたく病と現代の連帯

昨今、フリーターの増加が問題視されるが、どこの企業も人件費削減のため正社員雇用を減らして派遣とバイトで回すようになってるから、これは非正規雇用者自身の自己責任ばかりでもない(前にも書いたが、この環境を放置してれば、あらゆる日本の産業のクオ…

噂の真相と、もっとヒドい実像

一部でジャーナリスト専門学校(ジャナ専)の学生時代の悪事のホンの一部が暴露されてしまったが、甘い! じつは、この話にはオチがある。卒業式での一件は、当時、講師の一人から、とある雑誌で、実名こそ出されてないが「このようなバカ学生がいた」としっ…

GW期間中の仕事

月刊『サイゾー』6月号の特集「日本の裏側が見える! タブー破りの本100冊」で、「実在人物のパロディ漫画はなぜタブーになったのか?」という記事を担当しました。 従来、マンガ表現でのタブーといえば、差別、性描写、残虐描写というのがパターンですが、…

続・仮性引きこもり期の仕事

KKベスト新書『100文字でわかる心理学』渋谷昌三 監修(isbn:4584121419)刊行。 わたしは第1章の「基本の心理学」(ユングとフロイトの諸説の基本など)と、第4章の「心の病の心理学」(統合失調症、躁鬱、摂食障害など)のサブ項目を担当。 「フェティシ…

村はずれならぬ星はずれの狂人

またサークル「惑星開発委員会」からの依頼で、同人誌『PLANETS Vol.3』に、今度は「さよなら以費塾 呉智英夫子とその時代」という小特集記事を寄稿。内容は、不肖骸吉による呉智英夫子特別インタビューと、呉智英夫子略歴、ブックガイドなど。 なんでまた引…

龍に不死鳥に鬼に一角獣にヘラジカ犬…

PHP文庫『世界の「神獣・モンスター」がよくわかる本』(isbn:4569668208)刊行。 05年刊行の『世界の神々がよくわかる本』(asin:4569665519)、06年刊行の『天使と悪魔がよくわかる本』(asin:456966685X)と併せ、ひとまずシリーズ第三作と、いうよう…

倫理の定着は自然に任すよりなし

――さて、こんなことを今さら考え直したのは、ふと、もし「『e-まちタウンPPCマスターカードがムカつく』って、あんた個人の私怨であって、公的な社会正義でも何でもないやん」と言われたら、どう答えるべきか? と、思ったからである。 カード会社側は「便利…

「はしたない」の精神

マナーとか恥の意識というのは不文律なんだから究極的には合理性などないこともある、が、昔からずっとそれでやってきたんだし、それで仕方ないということも多いだろう。 たとえばの話、女性が強姦されるというのは、ひたすら可哀想で悲惨な話である。が、刑…

カッコよく見える闘争、カッコよく見えない闘争

黒澤映画の『七人の侍』が、カッコよく見えるのは、野武士の脅威にさらされたか弱い農民を守るために闘うからである。 かつての時代の「左翼」(「サヨク」ではない)は、建前としてであれ、自分の社会的不満より世界の飢えた人民の救済解放を主張した。かつ…

「敵」もタダの人(たぶん)

まず自分は被害者の側だと思っていて、かつ頭に血が上っている人には、その怒りの対象のことを、徹底的に卑劣な人間に違いないと思い込む、というか、徹底的に卑劣な人間であって欲しいと願い、瑣末なことでも、これは悪意に基づく行動に違いないと決め付け…

判断保留

ところで、1月18日、1月20日、2月17日にお伝えした、本ブログへのGoogle八分疑惑の件であるが、少なくとも本日3月26日現在、「電氣アジール」+「e-まちタウンPPCマスターカード」、「骸吉」+「e-まちタウンPPCマスターカード」などと検索したら、問題の2…

あの時ああすれば

SFとかで並行世界というネタが時々ある。『銀河鉄道999』で、鉄郎が、別のメーテルに連れられ別の999に乗った別の少年と出会う話なんかがいい例だ。 現状の自分以外の可能性を考える。中高生当時は「俺の将来はどうせ刑務所か精神病院」とうそぶいた時期もあ…

死者はいつまでも若い

何の偶然だか、昨年末から、数年間会ってなかった人と再会することが繰り返されている。 旧友で渡米することになった者がいたので、昨年末、その送別会があり、数年会ってなかった友人連中とまとめて会った。で、年が明けると親父の七回忌で四年ぶりに九州に…

人も獣も天地の虫(by山田風太郎)

『100字でわかる哲学』の仕事の時に調べたことだが、宗教改革のルターやカルヴァンに言わせると、(全知全能のはずの神の前ではちっぽけな卑小な存在の)人間ごときが俗世の善行で救われるなど思うのはオコガマシイ、ということになるらしい。 では、救われ…

希望は過去にしかない

音楽や映画やTV番組はもとより、ネットのニュースまで、現在最新のものに眼を向けるより、過去のものに関心が行く場合が多い。しかし、これを後ろ向きとは思ってない。 「現在にはないもの」「現状を打開するもの」は、やはり、現在だけ見ていては見つから…

創造性とは何ぞや?

たとえば、エジソンは電球というものを発明した。が、その材料に使ったガラスや銅線などは、以前から存在していたものである。エジソンはフィラメントに竹繊維の炭素棒を使ったそうだが、竹自体は自然界に存在したもので、エジソンが造ったものではない。 つ…

永劫回帰

わたしの携わってる仕事は、『世界の神々』にせよ、『100字でわかる哲学』にせよ、先行類書は存在する。だが、だからムダな仕事をしているとは思ってない。 政治でも文学でもなんでも、すべてはやり尽くされている、歴史は繰り返すのみ、と、よく言われるが…

人を個別に見るより属性で見ることが好きな人たち

しかし、わたし個人としては、いわゆる「非モテ論壇」と言われるものには今のところ一切共感はモテないでいる。 というのは、まず、多くの「非モテ」論者は、女性一般というものをひとくくりにしがちな点が、ズサンとしか思えないからである。 なるほど今の…